◆ 誰にも聴かせるつもりのない音が、いちばんやさしい音になる。
楽器を手に取ったとき、
すぐに「誰かに聴かせたい」と思う人もいるだろう。
でも案外多いのが、**“誰にも聴かせるつもりのない”**人たちだ。
彼らが鳴らすのは、拍手を求めるための音ではない。
評価を求めるわけでもない。
ただ、自分の心に耳を澄ませるための音なのだ。
◆ 上手じゃなくていい。届かなくてもいい。けれど、自分にはきちんと届く。
- 楽譜どおりに弾けなくても、
- 指がもつれても、
- 途中で音が止まっても、
**“そこに確かに存在している自分”**に気づける。
楽器を通して響くのは、
「今、自分がどんなふうに在るのか」という、
ささやかながら確かなメッセージだ。
◆ 誰にも見せないノートにだけ、本音を書けるように。
日記のように。
誰にも送らない手紙のように。
**“誰にも聴かせない音楽”**は、自分への対話の時間。
「自分は本当は、どうしたいのか」
「なにに疲れて、なにを手放したいのか」
言葉にはできないけれど、
音なら届く気がする。
◆ 音楽は“ステージの上”だけにあるものではない。
ステージで光を浴びる人も素晴らしい。
でも、
カーテンの隙間から射す午後の光の中、
こっそり鳴らされるギターの1音にも、
**人間らしい“音の祈り”**がある。
💬ある中年男性のピアノ再開
20年ぶりにピアノに触れた。
誰にも言ってないし、家族にも聴かせていない。
でも、練習のあいだだけは、妙に落ち着く。
音がうまく出なくても、心のノイズは静かになっていく。
不思議だけど、そんな時間が“今の自分”に必要だったのだと思う。
🎁まとめ|“誰にも聴かせない音”こそ、いちばん正直なメロディ
「伝える」より、「ほどく」。
それが、音楽のもうひとつの力だ。
誰かに披露するためじゃなく、
心の奥のこわばりをほどくために、
そっと音を鳴らしてみる。
その時間は、
決して無駄にはならない。
きっと明日の自分を、少しだけ救ってくれるから。